ありがとう 第2うめかハイツ 後編
2008/06/21 23:35 写真集
アパートの大家さんは、とても変わった人でした。
大家さんはこの辺りの地主さんで、内科のお医者さんでした。 ただ、家賃収入で月に200万円以上の収入になるらしく、本業の方はかなり怪しいものでした。 まず、建物が派手な紫色で、さらに赤や橙でコーディネイトされています。 家賃を払いに行くと、待合室では全国の都道府県の電話帳が出迎え、診察室はテレビとビデオデッキで埋め尽くされていました。 奥の部屋には無数のテープコレクションがあり、各物件の鏡張りの車庫には自慢のコンパクトカー達が鎮座していました。
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うちのアパートは、大家さんの診療所から二軒隣になるんですが、裏に秘密の通路が通っていて、家賃の取り立てや自慢のコンパクトカーを眺めるのに使っていたようです。 しかも、廊下の隅には呼び出し用のスピーカーまであって、面倒な時にはこれで呼び出したりもしていたそうです。 靴箱はお古の棚で、分厚い漫画雑誌を積み上げて支えています。 左の引き出しは年賀状、右の引き出しには「サイモチンS」のラベルがあり、こんなところでお医者さんらしさを垣間みることができます。
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その大家さんが亡くなってからは、息子さんが不動産業を引き継ぐことになりました。 私が今の部屋に移りたいと話すと、大家さんは畳の部屋をフローリングに変えて、エアコンまで設置してくれました。 この部屋は、これまでの二階とは異なり、専用の階段を使うようになっています。 下は台所、三方は窓に囲まれていて、他の部屋とは隔離された状態なので、物音が気になることもありません。 部屋は広いし明るいし、床はピカピカだし、とても同じアパートとは思えないほどの贅沢さです。
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この部屋に移ったのは、2000年の6月なので、ちょうど8年前ですね。 いくつかの挫折の後に、これからはパソコンで独力で生きていくぞと決心した年でもあります。 四畳半の時の不安は微塵もなく、大きな希望に満ち溢れていました。 これからは、自分の力だけで、自分の人生を切り開いていくんだ。 誰にも負けないような、立派なものを作り上げてやるぞ。 この8年間、回り道をしたり、絶望に打ちのめされたりもしましたが、なんとかここまでやってきました。 これからも、きっとなんとかなるでしょう。
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横の窓を開けると、目の前に隣のマンションの壁があり、そのすぐ上に窓が見えます。 布団を敷いて寝転がると、ちょうどこの窓が目に入ります。 この窓が開くことは滅多にありませんが、たまに女の子同士の話し声が聞こえてくるので、きっと女の子が住んでるんでしょう。 でも、窓伝いで仲良くなるような漫画みたいなことはありません。 道路側の窓を開けると、外が丸見えになります。 外の道はちょうど短大生の通学路になってるんですが、やはり窓伝いに仲良くなるなんてことはありません。
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それでも、ドラマ「傷だらけの天使」のペントハウスを思わせるこの部屋は、とっても大好きです。 綺麗なのは床だけで、壁は隙間だらけだし、天井はボコボコにふやけてるし、雨が降るとドアが閉まりにくくなるしで、やっぱりオンボロ部屋だったんですが、それだけに気兼ねなく好き放題できたし、とても快適な暮らしを満喫できたんですよね。 四畳半の部屋と違って、この部屋は幸せな思い出がたくさんつまっています。 今まで、本当にどうもありがとう!
まだ見ぬ新しい部屋では、一体どんな生活が待っているのかな?


























